2023年3月10日、本研究会が「目の見えない乳幼児の発達と育児ー家族と支える人のためにー」を出版いたしました。
見えないことは発達を阻害する大きな要因にはなりません。見えない子どもの発達を考える上で大事なのは「子ども自身が自分の周囲にいる人や物に対して、自発的に働きかけること」にあります。赤ちゃんが自分でその力を持つためには、初めは大人の手助けが必要です。では、大人は、何をどのように手助けしたらよいのでしょうか。
本書は、40年以上前に東京都心身障害者福祉センター職員によってまとめられ、現在では廃版となった『育児ノート』を、大幅に書き換えたものです。
出産後から家庭で始まる、目の見えない子どもの育児の具体的な配慮事項は、現在でもその本質に変わりがありません。また、幼児期からのインクルーシブ教育の必要性が指摘されながら、幼稚園や保育園に通う目の見えない子どもたちへの支援等について記述したものがないからです。
本書の発行にあたって、私ども視覚障害乳幼児発達研究会の月例勉強会等で、視覚障害児の教育や育児に携さわっている教員や研究者、親子さんに参加してもらい頻繁に意見を交換しました。そして、目の見えない乳幼児の育児に関して具体的で新たな提案を加えることができました。
群馬大学名誉教授、中野尚彦氏は巻頭言で次のように述べております。
「著者達は長い年月こども達を見てきた。見て知り得たことは書き残さねばならない。(略)この本は、時としてその育児の共有者になれる。(略)共有者は、本だけではない。助言し援ける専門家や先生もいると思う。その人達はこの本に書かれていることを知っているだろうか。理論や主張は様々にあっても、事実は事実だ。何をどう論じるにしても、事実は共有されていなければならない。この本は、目の見えない子ども達に関わり、親御さん達に助言し援ける人達に読まれていなければならないと思う。」
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韓国語の本が出版されました!!

とてもうれしいニュースです。
2025年9月1日、韓国のビンソジェ出版社から韓国語版が発行されました。
英智社の上村雅代代表は「本当に必要な方に届いてほしい」と韓国語版の出版を無条件で許諾しました。翻訳者は大邱大学障害学生支援センター事務局長のキム・ヒョンジンさん。キムさんは著者の一人である岡田節子さんとの出会いから『目の見えない乳幼児の発達と育児』を知り無償で2年以上かけて翻訳を完成させました。
キムさんは「『あなたはひとりではありません』というエールを通して、目の見えない乳幼児を育てるすべての方々に実際的な助けと希望を届けたかったのです。」と語っています。
韓国乳幼児特別支援教育学会会長のペク・サンス氏は、本書の推薦の言葉で次のように述べています。
『視覚障害乳幼児の発達と子育て』は、幼児特別支援教育を専攻してきた私に深い感動と実践的な示唆を与えてくれた一冊です。・・・出生直後から幼稚園期までを乳児編、幼児前期・後期編、幼稚園編に分け、各発達段階で子どもたちが見せる身体の動き、手を使った遊び、食事や運動、社会的相互作用など、生活全般を具体的な事例に即して詳しく説明しています。
特に『人は生まれたときから手を伸ばし、体を起こす。目が見えなくても同じである。』という一文は、すべての子どもが自分なりの方法で発達するという本の中心哲学を端的に示しています。著者たちは長い年月、実際に子どもたちと向き合い観察してきた記録を丹念にまとめ、読者に時代を超えた洞察を与えてくれます。 ・・・一文一文に込められた深い理解ときめ細やかな配慮を通じて、著者たちの哲学や精神も読者に十分伝わることを願っています。

韓国語版の31ページ部分